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四 「私に仲間は……」6
真田さんが結論を述べてくれた。
「だから、あなたに言葉を届ける心優しいフォロワーさんは、あなたにとっての仲間じゃないの。だって、鬱陶しいと思ったら無視すれば良いだけでしょ。学校や職場じゃないんだから会うこともないし。でもあなたのために時間をかけて言葉と心を伝えてくれた。素敵じゃない」
「そうですね。感謝しなければいけないですよね」
「ひとつ訊いて良い?」
真田さんが断りを入れてから私に質問をした。
「文章には作家の性格が出るのは当然だけど、そもそも小説や作品に、作家の履歴書って関係あるの?」
「はぁ?」
真田さんから問われている意味がわからなかった。
「あっ、わかりにくかった?」
「はい。何を問われているのか?」
「そうね。じゃあ、Web小説の中で、あなたが好きな作品を思い浮かべて」
「はい」
「もし、好きな作品を書いたフォロワーさんが、おばあちゃんなら、その作品の評価は下がるの? おじいちゃんなら評価は落ちるの? おばさんなら? おじさんなら? 自分より年下の女の子なら? 男の子なら? 身体が男性で心が女性なら? 逆に身体が女性で心が男性なら? トランスジェンダーなら? その人が精神的な病気を持っていたら? もしAIだとしたら? あっ、AIは飛躍しすぎか。ごめん、AIは取り消す。だからそんな理由で評価は違ったものに変化するの?」
「え?」
私は真田さんの意図することが汲み取れずにいた。
「じゃあ、その作家さんが、東京・愛知・大阪・福岡とか、都会に住んでいたら評価は高くなる? それとも地方に住んでいたら評価は低くなる?」
私は無言でいた。
「じゃあ、その作家さんが裕福なら評価は高くなる? 貧乏なら評価は低くなる?」
真田さんは何を伝えようとしているのだろう?
まだわからない。
「じゃあ、生まれが良家で育ちの良い人なら評価が上がる? 生まれも育ちも悪い人なら評価が下がる? 地位の高い人なら評価が上がる? 地位の低い人なら評価が下がる? 職業の違いや正社員とかフリーターとか無職とか、その違いで評価が変わるの?」
「真田さん、ごめん。私、何を問われているのかわからない」
「今、私が言ったことは全部履歴書的なこと。小説って、最初の窓口はおもしろいかどうかじゃないの。作品自体がおもしろいとか、好きか、ということじゃないの。書かれた言葉が好き。紡がれた文章が好き。ストーリーが好き。心が温まった。ほのぼのした。共感した。感動した。また読みたい。単純に、素直に、ストレートに感じるものじゃないの。小説の好き嫌いに作家の条件なんて必要があるの? 想像したことと違うことを知れば、がっかりして毛嫌いするの? 全てを否定するの?」
「真田さん、あの、なんとなくわかるんだけど」
「くだらない詮索や推測情報で本質を見失ってるんじゃない。最初は作品が好きでフォロワーさんとの交流が始まったんだよね。その交流の中で、応援し合ったり、励まし合ったり、支え合ったりしてるんでしょ。その行為に嘘はないでしょ。事実があるじゃない。あなたを気にかけて作品を読みに来てくれたり、応援してくれたりしてくれてるんだもの。伝えてくれた言葉、その行為と想いに感謝じゃないの。って私は思うの。その感謝にフォロワーさんの履歴書は関係ないでしょ。っていう話」
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