四 「私に仲間は……」7

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四 「私に仲間は……」7

 真田さんは少し息継ぎをして続きを話し始めた。私は真摯に聞き入った。 「だって、もともと作家は本名で勝負している人って少ないでしょ。筆名だってあるんだし。ならばそれも嘘でしょ。出版界で決めてるルールだっていうだけじゃない。Web小説の世界だってそうでしょ。フルネームの実名で活動している人ってほとんどいないんじゃない。出版関係者だとしても筆名かもしれないし。それも実態じゃないってことになるよね。あなたが支えられているWeb小説の世界では、行為が事実じゃないの。さっきあなたが話してくれたよね。フォロワーさんの言葉にはげまされた。応援してくれた。うれしい感想をいただいた。悩んだときはコメントをくれた。自分が読みに行けなくても読みに来てくれる人がいた。そのことが、フォロワーさんの履歴書や戸籍と違って、想像してた人じゃなければ、今までしてくれたフォロワーさんの行為が消滅するの? 全部なかったことになるの? もしあなたがそう思うなら、随分身勝手な見下しね。あなたはいつから評価者、査定官になったの? それとも選考者、選別者になったの? 同等じゃなくて、上から目線で人を評価してるの?」  そこで私は初めて口を挟んだ。 「違う。そんなことで大事な人を判断してない。見下げてもいない。悪い評価もしていない。そんな意地悪な条件なんてだせない。嘘じゃない。そんなこと思ってない。だって私にくれた言葉は存在するから。やっと私に居場所をくれた人たちだから。だからフォロワーさんから離れない限り、私からフォロワーさんを離れたりはしない」  真田さんが意地悪な質問をしてきた。 「もしフォロワーさんが離れたら追いかける?」 「離れたら、離れる理由があってのことだから、今までのことに感謝だけします。それと一応作品は一通り読むだけにしようかと思います。離れたフォロワーさんに付きまとって嫌な思いはさせたくないので、コメントしたりとかそれ以上のことはしません。読み終えれば、そっと離れます」  真田さんが微笑んで言った。 「西内さん、もう、答えは出てるじゃない」 「えっ?」 「原点に戻れば良いのよ。だって、Web小説に投稿するってことは、他人に自分の作品を読んでほしくて投稿するんでしょ。そうであればほとんどの人が読みに来てくれる人に感謝をしてるわよ。その人の大事な時間を費やしてくれてるんだもの。だけど、文句や暴言、誹謗・中傷や批判する人はまた別問題だけどね」 「そうですね。じゃあ、あの」  真田さんが頷いてからハッキリと結論を言った。 「最後にもう一度だけ言うわよ。今でもあなたに言葉をくれる人がいるんでしょ。それは事実でしょ。そんな心優しい人たちは、もうあなたの仲間じゃない。っていうこと。はい。おしまい」  やっと理解できた。確かに、今までくれた言葉に履歴書なんか関係ない。知り得たとしても、届けてくれた言葉が変わるわけでもない。  だから仲間だと信じて良いんだ。
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