48人が本棚に入れています
本棚に追加
23
朝方、玄関の戸を叩く音で目が覚めた。『トントン』ではなく『キリ、キー』とガラスに爪を立てる音。だから普通の人でもおかしな人でもないことに気づく。
「大黒さん?」
「おはよう」
昨日、別れたときと同じ服だった。疲れた顔をしている。
「どうしました?」
「寒い」
と言ったからパーカーを貸した。
「それしかなくて」
「小さい。でも入った」
つんつるてんというよりは無理くり。
「お茶淹れますね」
「うん」
濃い緑茶を飲みながら大黒さんは話してくれた。昨夜、就寝中のおばあさんが敷布団パッドの紐で首をくくってしまい、救急車で運ばれたそうだ。一命は取り止めたらしいが意識は戻っていないらしい。そんな状況なので警察とも話をしなければならないらしい。
顔や頭をくしゃくしゃにして、事故なのに自分を責めている。私はどうしたら大黒さんの役に立てるのかを考えた。手を摩って、毛布に包まった。
「やる気ないよ」
「当たり前でしょ。少し寝て」
最初のコメントを投稿しよう!