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24
まだ時計は朝の5時すぎ。やっと明るくなりつつあるところ。今の外の空気を吸っても大黒さんはすっとしないのだろう。
毛布の中で泣いていた。祖母を殺しそうになったこと、殺しそこなったことを悔いているのだろうか。布団を抱き締めるふりをして彼を包んであげることしかできない。饒舌だったなら、床上手だったら違うやり方で慰めてあげられるのに。せめて弱音を吐いてほしい。
尻に手が伸びてきたけれど抗わない。されるがまま。すぐに寝息に変わる。ずっと眠れなかったのだろう。だから私のところに来た。今だって私が少しでも動いたら、電話が鳴ったら飛び上がって起きるのだろう。身内が病院にいるときって誰だってそうだ。自分の祖母のときが今の彼と同じ状態だった。
なるべく呼吸を揃えることに集中した。大黒さんの睡眠の邪魔にならぬよう。太陽の光が私の腕を照らす。動かなさない。今は紫外線のことなんてどうでもいい。自分よりもこの人のほうがずっと大事。
すっかり陽が昇ってから大黒さんは帰って行った。
「店開けなくちゃ」
真面目なんだな。蒸しパンとスーパーの倍の値がする日用品を売る商店に朝から客が来るとは思えない。病院へ行くのだろう。どっちを願っているのだろうか。どっ地の結果になっても大黒さんは苦しむだろう。損な役回りを自ら率先して受けているように見える。
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