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 数日間、うちには来なかったし連絡もなかった。次に来たときには、 「親戚が来て、施設に入れようってことになった。ここから車で一時間くらいのところ」  と顔色も声色も変えずに報告した。 「そう」 「明日おばさんたち帰るから挨拶しとく?」 「何の?」 「大人の。うるさいし、あの人たち」  どんなに嫌な人たちなのだろうと怯えていたのに、実際に会ったらそうでもなかった。でも外面を気にする人たちであることは何となく伝わった。お見舞いに総レースのワンピース、緑のカバン、パールのブローチが病院には不似合いだ。叔母さんとその旦那さんにしか会わなかったけれど、他にも幾人か親戚はいるようだった。 「まあ、きれいな子。匠のなにがいいの。よくわからないでしょう? お金もないし」  と私の脇に入り込んで、あなたのほうがよくわからないと言ってしまいそうだった。女同士だからってパーソナルスペースには立ち入らないで欲しい。そうか、私は男の人だけじゃなくて女の人も苦手なのだ。人嫌い。大黒さんだけが特別。それをどうにかして伝えたいと思っていたところだった。
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