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しかし彼女は小声で、
「あたし、席を移動するわ。なんかここ、濡れているのよ」
と、前の列にいってしまった。
俺もあわてて後を追おうとするが、タイミング悪く、映画はクライマックス。
怖くて動けない。
……でる。
……でるだろ、アレ。
アレ。アレ……
気を紛らわせようと、ポップコーンに手を突っ込む。
ん?
ポップコーンが濡れている?
水滴が落ちてきてる。かすかな雨の音がする……天井から。
……天井……から……雨音?
「うっひゃあああああ!」
俺は叫んだ。
天井には子供みたいな顔の爺さんが梁にしがみついていた。コッチをにらんでくる。ひいいいいっ! 椅子からころげ落ちた。
ドカバカ、ドカシャン!!
その音につられて、
「きゃああああぅ」
「なに、なに? こわいいい!」
あちらこちらで悲鳴が。
悲鳴に交じり、頭上から押し殺した声が聞こえた。
「天井席で……みちゃ……いかんのか」
「ひいいいい!」
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