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第1話 結婚概念?
それは、同僚の唐突なひと言から始まった。
「マトーさんは、コモリさんといつケッコンするんデスか?」
「ほへ?」
仕事の合間。
前の宴会場と次の宴会場の合間の時に。
正社員となって、まだ半年も経っていない新卒者……眞島怜は、正社員としては先輩の中国系ハーフ……王苺鈴に聞かれたのだ。お互いに暇な時間を利用して、グラス磨きをしながら。
「思うのデスヨ」
「う、うん?」
「マトーさんとコモリさんは、ホテルの中でも外でもラブラブなカップルデス! ドーセーもしてるんデスから、ケッコンも近いはずデス!!」
「お、落ち着いて……王ちゃん?」
「ワタシはジューブン落ち着いていマス!!」
まだ発音はカタコトが目立つが、話せる日本語がだいぶ増えてきた。常日頃、ビジネスでもホテルと言う特殊な環境でお客様をもてなす立場だからだ。お客様へは敬語、丁寧語でもバックヤードに回れば、苺鈴はいつもこんな感じだ。
ともあれ、裕司との結婚をそこまで主張されるとは思わなかったが。
「……昔は違うだろうけど。今はそこまで結婚は急がないと思うよ?」
「……なんでデスか?」
「まずは、お金だね」
ビジネスホテルでも、規模は会場によって違ってもウェディングの披露宴はきちんとある。
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