雨雫きらきら

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 放課後、彼に会った時間に昇降口で待った。階段に腰掛けて、空を見上げる。昨日の雨は嘘みたいに、薄水色の空はどこまでも続いていた。空気も澄んでいて、つい大好きな歌を口ずさむ。すると、わたしの声にもうひとつの声が重なった。胸の高鳴りでわかる。この声の持ち主が。わたしの声と彼の声。きっと音の波形が合うんだと思った。だって、すごく耳が気持ちいい。 「俺もその曲好き。また、会えたね」 「昨日は傘、ありがとうございました。とっても助かりました。会えてよかったです」  その日は一緒に歩いて帰った。音楽の趣味が合うようだった。イヤホンを片耳ずつ突っ込んで、お互いのおすすめの曲を聴きながら歩く。たまに触れる制服の袖がくすぐったかった。  すぐにわたしたちはふたりでいることが当たり前になった。なんにもない街で暮らすわたしたちのデートは、大抵街のはずれの丘の上。ふたりで寝転んで、空を見上げながら一緒に歌を唄うの。それだけで楽しくて、幸せだった。
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