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その言葉に素直に喜べない自分が憎い。嘘じゃないかって疑ってしまう。わたしは雫のことが信じられなくなっている。だけど、どうにもわたしは彼の声が好きだった。好きで仕方なかった。
「わたしとは、同じ傘に入ってはくれないんだね」
ぽつりと吐き出した言葉の意図がわからないのか、雫は首を傾げた。少し悩んだ後、雫は青い傘をひらいてわたしの頭上に掲げる。傘の内側はふたりだけの世界で、そこに知らない女の人がいたのだと思うと悲しくてくやしかった。雫の胸を両手で押し返し、わたしは傘の下から抜け出す。
「あー、もしかして昼間の見てた?」
バツが悪そうに雫は頭をガシガシと掻く。その様子に見てしまったわたしが悪いんだなぁと思えてくる。唇をとがらせて頷くと、雫はへにゃんと困ったような顔をしてみせた。
「昼間一緒にいたのは大学のクラスメイト。美雨が大学合格したって言うからお祝いのプレゼント選びに付き合ってもらってたんだよ。ほら、これ」
雫は鞄に手を突っ込むと、水色の包装紙で包まれた細長い箱を取り出した。雫はわたしの手にその箱を握らせた。
「本当はちゃんとお祝いしてあげたかったけど、これは今日あげる」
「ありがとう。開けてもいいの?」
「もちろん」
包装紙をはがすと、表面がつやっとした白い箱が出てくる。アクセサリーだろうなってなんとなくわかる。開けてみると、雫型のチャームのついたネックレスが入っていた。
「美雨をイメージして探したんだけど、どっちかっていうと俺になっちゃった」
「うん。雫、だね」
「安物で申し訳ないけど」
「ううん。嬉しい」
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