招かれたお城

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招かれたお城

 こんなことが本当に起こるなんて。  瑠香(るか)は目の前にそびえ立つ真っ白な豪邸を見上げた。これまで足を踏み入れたことすらない高級住宅街のど真ん中。豪邸を護る塀の脇、フェンスの向こうには円を三分割したエンブレムがついた外車が二台。  ここが、これからあたしが住む家なんだ。  江原瑠香は高校一年生。  昨日までは母と二人、昭和に建ったアパートに暮らしていた。それが、こんな大邸宅への大出世。大逆転。 「わかってるわね、瑠香。行儀よくしてよ」  隣に立つ母親が緊張を隠せない声で言った。瑠香はほぼ同じ身長の母を横目で見た。  まだぎりぎり三十代の母親は、瑠香から見ても若くて綺麗だ。 「わかってるって、ママ。あたしだってもう戻りたくないもん、あんなボロアパート」  それに、それだけじゃない。  母親がインターホンのボタンを押し、中の住人と一つ二つ会話すると、すぐ横の入り口が自動で開いた。  手入れが行き届いた芝生を区切るコンクリートの通路を歩き、玄関についた。  玄関ドアを手で押さえ、若い男性の笑顔が瑠香たちを出迎えてくれる。 「ようこそ。待ってましたよ」
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