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「由香さん、よく来てくれたね。瑠香さん、楽にして」
広々としたリビングで、背の高い中年男性が出迎える。この邸宅の主、森崎智之だ。瑠香の新しい父親となる人。息子の皐月とはあまり顔は似ておらず、細い目にどっしりした鼻が目立っていた。
「家の中は、後で皐月に案内させるから。まずは乾杯して食事にしよう」
その日はモデルルームのようなダイニングで、レストランのような食事を四人で囲んだ。
聞けば、近くのレストランのケータリングサービスを使用したとのことだった。森崎智之は照れたように、
「男所帯なもので、自分たちで用意したらとんでもないことになるからね。初日から酷いもの食べさせたら由香さんに逃げられてしまう」
と言ってワインを口に運んだ。
母親の由香は、智之が兼任で役員を務める会社に秘書として派遣されていた。そこで「見初められた」ことになる。
――我が母ながら、上手くやったもんだ。
瑠香は食べ慣れない上品な食事の味もよくわからず、愛想笑いを浮かべた。
母は料理の腕はプロ並みだから、主婦としてもうまくやるだろう。
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