招かれたお城

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 食事を終えると、皐月が家の中を案内してくれた。豪邸とはいえ一般の家庭だから、それほど時間はかからず見終わる。最後に、二階の一室に皐月が招き入れた。 「ここが、瑠香ちゃんの部屋だよ。足りないものがあれば何でも言って」  自分だけの部屋を持つのはこれが初めてだ。瑠香は胸の高鳴りを感じながら、部屋を見回した。ベッドも机も本棚も、作りがしっかりしていて値が張るであろうことは想像がつく。 「家具は、親父に言われて僕が選んだんだけど、どうかな?女の子が好きなデザインかどうかちょっと自信ないんだけど」  瑠香はぶんぶんと首を振り、 「すっっごく!素敵!嬉しいです、えっと……おに……」  言いよどんだ瑠香に皐月は小さく笑い、 「好きなように呼んで。お兄ちゃんでも皐月でも」 「あ、あの……」  ごく自然に、肩に皐月の手が触れた。 「敬語じゃなくてもいいよ。兄妹なんだから」  瑠香が顔を上げると、近くに皐月の整った顔があって思わず息を止める。  うっとりするほど、カッコいい。  皐月は形の良い唇を微笑ませ、 「少しでも早く……きみと仲良くなりたいんだ」  と言って、その手で瑠香の明るい色に染めた髪を撫でた。  じっと瑠香を見つめるその目は、瑠香を夢中にさせるのに十分過ぎるほど艶めいていた。
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