32人が本棚に入れています
本棚に追加
食事を終えると、皐月が家の中を案内してくれた。豪邸とはいえ一般の家庭だから、それほど時間はかからず見終わる。最後に、二階の一室に皐月が招き入れた。
「ここが、瑠香ちゃんの部屋だよ。足りないものがあれば何でも言って」
自分だけの部屋を持つのはこれが初めてだ。瑠香は胸の高鳴りを感じながら、部屋を見回した。ベッドも机も本棚も、作りがしっかりしていて値が張るであろうことは想像がつく。
「家具は、親父に言われて僕が選んだんだけど、どうかな?女の子が好きなデザインかどうかちょっと自信ないんだけど」
瑠香はぶんぶんと首を振り、
「すっっごく!素敵!嬉しいです、えっと……おに……」
言いよどんだ瑠香に皐月は小さく笑い、
「好きなように呼んで。お兄ちゃんでも皐月でも」
「あ、あの……」
ごく自然に、肩に皐月の手が触れた。
「敬語じゃなくてもいいよ。兄妹なんだから」
瑠香が顔を上げると、近くに皐月の整った顔があって思わず息を止める。
うっとりするほど、カッコいい。
皐月は形の良い唇を微笑ませ、
「少しでも早く……きみと仲良くなりたいんだ」
と言って、その手で瑠香の明るい色に染めた髪を撫でた。
じっと瑠香を見つめるその目は、瑠香を夢中にさせるのに十分過ぎるほど艶めいていた。
最初のコメントを投稿しよう!