まるで少女漫画のような

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まるで少女漫画のような

 次の日から、瑠香の母親――由香は完璧な食事を用意した。瑠香は直接聞いていなかったが、智之の両親の世話も由香の仕事となったようで、朝は瑠香と一緒に家を出て、少し離れた実家へと『出社』していた。  要は、豪邸での生活を保証される見返りとして家事や介護を担うという、半ばビジネスのような取引がなされたのだろう。  ただ、瑠香としては母親の仕事先が変わっただけのことだったし、今までと変わらず手伝いをさせられることもないので正直どうでもよかった。  皐月の母……智之の前妻についても、どうでもよかった。もう十年以上前に離婚したとか死別したとかちらりと聞いたが、いなくなった人間のことは気にしても仕方ないと思っていた。  それに、ほじくり返してはあまりよくない話題ってことくらい、あたしもわかる。  皐月の機嫌を損ねかねない話題には、触れないに越したことはない。  新しい生活となって1ヶ月ほど経ち。 「瑠香ちゃん。今日も勉強教えてあげるよ」  夕食後、二階の自室に向かおうとするとき、皐月が声を掛けてきた。瑠香は顔が緩むのを抑えられず、慌てて手の平を頬に当てた。 「……うん。お兄ちゃん」  勉強なんか大嫌いだったが、皐月が近くに座って手取り足取り教えてくれるから、何時間でも出来そうだった。なかなか理解できない箇所は息が触れそうなくらいに顔を近づけて教えてくれ、ドキドキして余計に頭に入らなくなった。  まさかとは思ったが、多分皐月は自分に……好意を持っている。それは最近確信に変わった。
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