夢の中かもしれない

2/3
前へ
/12ページ
次へ
 婚約者。  そんなの、聞いてなかった。  つーか、今時、高校生が婚約とか、ある?少女漫画ならよくあるけど……。  瑠香の頭に一瞬疑問が湧いたが、でも、こんな高級住宅街に住む人には普通なのかも、という気もした。家柄だの、血筋だの。  皐月が瑠香をそっと見た。その目は瑠香の表情を窺うようだった。  あたしが傷ついてないか、心配してくれてるんだ。  皐月はスマホを机に置くと、吐き捨てるように、 「親同士が決めたことだろ」 「始まりがどうであれ、付き合っていたことに変わりはないでしょ」  少女は一歩も退かずに皐月に対峙している。瑠香は内心、ワクワクしてきていた。  これって、どう見ても――ヒロインと彼氏の間を引っ掻き回す、悪役女子じゃん?なんだっけ……馬がどうとか呼ばれるやつ……。  そんなことを考えていた瑠香に冷たい視線を向け、 「まさか、この子のために別れたいって言ってるの?」  皐月は無言で……だがしっかりと頷いた。  少女は顔をひきつらせ、 「馬鹿言わないでよ。私知ってるのよ。血は繋がらなくても兄妹でしょう?結ばれるわけないじゃない!私は絶対別れないから!」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加