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婚約者。
そんなの、聞いてなかった。
つーか、今時、高校生が婚約とか、ある?少女漫画ならよくあるけど……。
瑠香の頭に一瞬疑問が湧いたが、でも、こんな高級住宅街に住む人には普通なのかも、という気もした。家柄だの、血筋だの。
皐月が瑠香をそっと見た。その目は瑠香の表情を窺うようだった。
あたしが傷ついてないか、心配してくれてるんだ。
皐月はスマホを机に置くと、吐き捨てるように、
「親同士が決めたことだろ」
「始まりがどうであれ、付き合っていたことに変わりはないでしょ」
少女は一歩も退かずに皐月に対峙している。瑠香は内心、ワクワクしてきていた。
これって、どう見ても――ヒロインと彼氏の間を引っ掻き回す、悪役女子じゃん?なんだっけ……馬がどうとか呼ばれるやつ……。
そんなことを考えていた瑠香に冷たい視線を向け、
「まさか、この子のために別れたいって言ってるの?」
皐月は無言で……だがしっかりと頷いた。
少女は顔をひきつらせ、
「馬鹿言わないでよ。私知ってるのよ。血は繋がらなくても兄妹でしょう?結ばれるわけないじゃない!私は絶対別れないから!」
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