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残酷な魔法は、きっとそこにはないから。
「魔法なんて大嫌いだ!何が魔法使いだ、何が魔法陣だ!魔法なんてあったって何も変わらない!」
少年は叫ぶ。
一人の魔法使いに向かって、泣き叫ぶ。
少年の黒髪は血に濡れ、魔法使いの青年は深く被ったフードの下でじっと少年の言葉を聞く。
「魔法が全部救うっていうんなら、返せよ!」
少年は魔法使いを突き飛ばすと、何もなくなった世界の中で怒鳴った。
「俺の家族を返せ!」
魔法使いは少年の力によろけながら、黙って彼を睨み付ける。
その睨みは、あまりに感情がなく、怒りを知らぬ者のようであった。
「……」
魔法使いは少年を見つめ、何かをこらえるような顔をして。
少年は魔法使いのことをまた突き飛ばす。
大粒の涙を彼のローブの上に落としながら大嫌いだ、と呟いた。
「魔法使いなんて大嫌いだ。死んじゃえば良い。お前が代わりに死ねば良かったのに!」
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