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わたしと男の子だけがその場に取り残された。男の子はしばらくうなだれたあと、立ち上がって散らばった本をかき集める。男の子が振り返って、目と目が合う。
根本くんだった。同級生の中でも、とりわけおとなしいタイプの男の子だ。そういえば、学校の少年野球のチームに入ったけれど、続かなかったと聞いたことがある。丸刈りから伸びはじめた短い髪が、根本くんのこれまでのいきさつを克明に物語っていた。
「はや……立花さん」
「あかりでいいって」
反射的にそう口にした。わたしは基本、同級生には名前で呼ばせている。でも中にはそれを気恥ずかしいと思うひともいて、根本くんなんかはその筆頭だ。親しげを装い、何度も名前呼びを促しているというのに、根本くんは自分を曲げない。もはや律儀を通り越して頑なだった。そういうところが癪に障るのだと、根本くんは気づきもしない。
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