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優斗はずっと何故か不機嫌だ。あと30分で俺の仕事は終わり。
瑞樹と優斗が話している中お気にの女が擦り寄って何か言っていた。
瑞樹はこっちを見て何か心配そうな顔をして来た。俺の事を報告でもしてるんだろう。すると優斗がこっちに来る。面倒なことになった。
「……お前恵梨香の事を殴ったのか」
下を向いたままため息を付き、優斗は面倒そうにそう言う。
「……、殴ってません」
俺がそう言うと急にばっと顔を上げた。
「……、葵?」
声だけでバレるのか。
「違います」
俺は躊躇わず否定する。
「葵、あおいっ…」
急に抱きついて来て、俺は蹴りを入れそうになる。
「っ…、離してください」
瑞樹を見ると少し気の毒そうに俺を見て『もういい』と口パクして笑って軽くお辞儀をしていなくなった。それがいらない気遣いだと気が付かずに。助けろ。
「なんでいなくなったの…、」
「貴方は俺に興味なかったでしょう」
「違う!任務与えなかったのだって俺から離れられなくする為だし…、あの女を使ったのだって嫉妬して欲しかったからだし…、任務行かせたのは族にいる限り年1は行かせなきゃいけなかったからで…」
俺の腕を掴んで俯くが、俺にはもうあんたに気はない。
「……、俺にはもう新しい主人がいるんです」
「っ…、俺の愛は伝わってなかった…?」
ぼろぼろ涙を流す優斗。
「…俺だって愛してましたよ。でも俺は貴方に愛されてないと思った。だから抜けたんです」
「俺は間違ってたの…?葵のために仕事こなして、頑張ったんだよ…」
「俺は一緒に過ごしてくれた方が嬉しかったですよ」
「…もう、取り戻せない?」
俺はこの3ヶ月くらいをあいつと過ごして来て理解した。
「はい、俺は他に愛してる人がいます」
「……そっか…、でもたまに会うくらい許して。今の最愛の人は誰?」
そう聞かれて俺は多少戸惑ったが、その名前を口にした。
「凛」
「……凛かぁ…あの時行かせなきゃ良かったなぁ…」
優斗はそう言って少し笑った。
「…もう帰ります。それでは」
「うん…、またね」
腕を離してもらい、振り向こうとした時、ふわっと何かが唇に当たった。
「っ…」
「ごめん、凛には内緒にしておいて」
と彼は笑った。
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