変化する、血を添えて

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 入社式の2ヶ月前。  内定者を会社が集めた。  顔見せ会という名の事前研修だった。  当然のように、その研修中は無給と告げられる。  建前としては懇親会らしいので、もしかしたら法には触れていないのかもしれないが、今時そんなことをする会社に勤めることになるのか、と僕は自分の選択を後悔していた。  嫌々ながらも時は過ぎ、午前中、名刺の渡し方や御辞儀の仕方をレクチャーされ、一旦休憩が挟まる。  懇親会のはずなのに、昼食は各自が自費で自由に摂るように、と告げられた時には耳を疑ったが、初対面の人間と表面上の会話をしながら食事をするのも嫌だったので、そこは少しだけ安堵した。  ――入社まではまだ日がある。今時、無給での事前研修などをする、そんな旧態依然とした会社への入社など、少し考え直すべきなのかもしれない。  研修会場の会議室で、僕がそんな事を考えながらコンビニのおにぎりを頬張っていると、彼は話し掛けてきた。  同期入社となる彼は、初対面だというのによく喋る。  僕はあまり自分からは話し掛けないタイプなので、そこは少し助かりもしたのだが、初対面だというのに『兄弟』なんて言うものだから、僕はどう反応していいのか困ってしまった。
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