変化する、血を添えて

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 僕が彼の発言に対して反応すると、彼は返してくる。 「いや、たぶん俺とお前は兄弟だ。よろしくな」  随分と馴れ馴れしい。  初対面にも関わらず踏み込んでくる輩は、あまり好きではなかった。  同期とは出来るだけ仲良くしておくべきだとは思うが、厚かましい友情は要らないし、そもそも入社自体を考え直したい。 「いや、うん、たぶん僕らは初対面だと思うんだけど、もう少し段階を踏みながら兄弟になっていこうよ」  少し困った後、そう返した。  鬱陶しい輩に捕まってしまったことに、僕はまた嫌になる。  入社式前に無給の研修を行う会社も嫌になれば、そこで共に働くことになる同期も嫌になった。  そして端から見れば、この鬱陶しい兄弟も、僕も、もしかしたら同類に見えているのかもしれないと思うと、余計嫌になる。 「いや、そういう意味じゃない」  彼は僕の言葉に続ける。 「いや、どういう意味?」  すぐさま彼は重ねる。 「俺とお前は血の繋がった兄弟だ、弟よ」  ・  ・  ・  なんなんだ、こいつ。
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