変化する、血を添えて

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「俺には生き別れの弟がいる。幼い記憶なので顔は曖昧にしか覚えていないが、お前を見た時、ピーンと来た。俺が兄さんだよ、弟よ」  ……頭がおかしいのか、こいつは。  言っている意味がわからなかった。 「いや、あのさ、同期だよね、僕ら。となるとさ、同い年くらいなんじゃないの? 僕ら」 「俺、1浪して大学入って1回留年してるから、2つ上だ。弟は2つ下だった。つまりお前が弟だ」 「うん、ごめんけど、僕も1浪してるので1つ下だね、残念」  別に残念でもなんでもないのだが、どう返していいのかがわからない。 「そうか、じゃあ年子だった気もする。つまりお前が弟だ。よろしくな」  じゃあ、って何だよとは思うが、やはりこいつが面倒臭い人間だということはよくわかった。  会社というのは結局のところ、同種の人間が集まってくるものだと聞いたことがある。こんな輩が集う会社なのだと思うと、いよいよもって、この会社に入社したくなくなってきた。 「そもそも、僕には生き別れの兄弟なんていないんだけど」  まだ彼が冗談で言っているという可能性もあるため、なんだか根本からの否定はし辛かったのだが、面倒になってきたので僕はそう告げた。  そもそも、そんな記憶も記録も1つも無い。 「まぁ、お前はまだ幼かったからな、覚えていないのも無理はない」  ……だから1つしか違わないというのに。
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