変化する、血を添えて

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 2ヶ月後。  僕は入社式に出席した。  当然、不安はある。  新生活への恐れも、僕の理想とは言えない会社ではあったことも、社会の一員となり責任を負うことも、全てが不安で渦を巻いている。  でも、何かが違うのであれば、変えればいい。変わるべきが僕なのであれば、変わっていけばいい。  僕は2ヶ月の間に、本心からそう思えるまでに、心を整えてきた。  式はしめやかに執り行われた。  式が終わると、人事部の偉い人から、各々の配属先の発表が始まる。  新入社員一人一人の名前を読み上げ、配属先を告げている。  僕の名前が読み上げられる。  僕は総務部への配属となった。  具体的な業務内容はまだよくわからないし、色々不安なこともあるが、まずは精一杯頑張って、弱音はその後に吐けばいい。  僕は心からそう思っていた。  そして、そう思えるきっかけをくれた僕の兄に、心の中でそっと感謝を捧げる。  捧げながら、気が付く。  ――兄の名が、呼ばれていない。  僕は混乱したが、同時に不安になってくる。  ――何かあったのだろうか。  義兄弟の安否の沙汰が、僕の頭をよぎった。
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