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なんか、なぁ。
漆黒色に消炭色の家具が置いてある部屋に一つだけ、胡粉色の明るい家具が置いてある。
正直な感想、違和感しかないし変だ。
胡粉色の家具を後二,三個置けばこの微妙さは無くなるだろうが、ここは俺の家じゃないし口出しするのもな、と横にいる綺月を見ると嬉しそうにしており微妙だと言う事も言えずただ部屋にマッチしない胡粉色の家具を眺める。
「部屋が明るくなった、ありがとう」
本気で言ってるのか、なんて喉まで出ていた言葉は口には出さず飲み込む。
「いえ、自慢では無いですが得意なので大丈夫です。何より、色は好きですし」
綺月の方を向き、愛想笑いをする。
すると、綺月は眉をひそめた。
「揺。お前のそれは…お前のする愛想笑いはなんだ?俺は、お前の心からの笑顔が見たい。愛想笑いをするくらいなら笑うな。面白いと思った時にだけ笑え。俺からのお願いだ。」
この人は、変わっている、と揺は思った。
元からおかしいとは思っていた。「可愛い」だの「好きなやつ」だの、綺月は頭がおかしいのだろうなんて揺は思う。
だが、揺にはそんなことどうでもよかった。
綺月は揺の事を大事にしてくれるからだ。
「はい、分かりました」
「昔のような無邪気な笑みを必ず取り戻すと約束する」
愛想笑いをやめ、揺は無表情のまま答える。
返ってきた綺月の言葉に、最後無邪気に笑ったのはいつだったか、あいつの隣だったか、なんてのんびり考えていた。
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