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これとか、あれも。
「綺月さん、これとかどうですか?タンスやクローゼットは立派なものでしたけど、収納棚とかってありませんでしたよね?こういうのを置くと部屋も明るくなって、それに使い勝手がいいですよ。あ、でもあれも捨てがたいですね。消炭色ってかっこいいだけじゃなく色んな色とも合うんですよね。だから悩んじゃいますね!」
揺は今、綺月の部屋に置く家具を選びながら熱弁していた。
絵が好きなのは知っていたが、色の組み合わせも好きなんだな、と綺月は微笑ましくそんな姿を見つめる。
「揺、時間はたっぷりある。だから話もたくさん聞いてあげれる。舌を噛んでしまってはいけないからゆっくり話すんだ」
身の回りの事に興味のない綺月だが、揺の話となると話は別で。
揺の口から出る言葉全てが聞きたくてしょうがなかった。
楽しそうに話すなら、尚更。
「舌を噛んでも死んだりなんてしませんし、大丈夫ですよ。」
愉快な考えをしている綺月とは裏腹に、目の前で自殺なんてされそうになったら心配にもなるよな、なんて考えている揺だった。
綺月は怪訝そうな顔をしたが、何も言わなかった。
話をそらすために揺は一つの家具を指さして、口を開いた。
「綺月さん、この家具がいいと思います。消炭色にピッタリなだけでなく使い勝手もいい、完璧ですよ」
「じゃあそれを買おう。店員に伝えてくる、他に買った方がいいものとか欲しいものがあったら言ってくれ。」
綺月はそう告げて、スタスタと歩き出す。
選んだのは俺だから、俺が払うのが当たり前だと思っていた揺は、数秒固まっていたがハッと我に返り小走りで追いかける。
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