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きえちゃえ、俺。
気持ちいい風を体の全身で受けている。
前髪はもちろん、ボタンを止めていなかったスーツまでもバサバサと後ろに押されていく。
そんなことには気を向けず、両手を横に広げて目を瞑る。
瞑った目からは、酷いほどに綺麗な涙が待ちきれずに次々と飛び降りていく。
「…気持ちいい。俺には、ここしかないよ。ありがとう、さようなら。」
大好きな、大切な思い出の場所で死ぬ事が出来るなんて最高だ、と体を前に倒した。
最後くらい、笑顔でいよう。
こんなゴミみたいな世界での、最後の足掻きだ。
眞島揺の存在を、誰も認めなかったこの世界で、最後に俺自身が認める。
「やめろ!!!!」
後ろから誰かに引っ張られる感覚がしたが、お構い無しに意識が飛んでいった。
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