どちら様で。

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どちら様で。

目を覚ますと、暗い部屋に居た。 漆黒色の部屋に、チラホラと見える黒ではない…消炭色(けしずみいろ)の家具。 『地獄の色は、なんだろうな。やっぱ赤系だったりするのか?海老色(えびいろ)とか朱殷色(しゅあんいろ)だったりするんだろうか。もし行けたら、描いてみよう』 『お前は相変わらず絵命だな。そんなやつの相手出来んのは俺くらいしかいねぇんじゃねぇの〜?ま、居ても離す気ねぇし譲らねぇけどなぁ』 …嫌なものを思い出した。 「起きてたのか。」 体も起こさず目だけを動かして周りを見ていると、頭上から声がした。 体を動かそうとしたが、咄嗟には動かせなかった。 仕方なく、視線だけを向けた。 「…そんな顔をするな。食べてしまいたくなるだろう」 つっこむことすら馬鹿らしく思えるほどに今の(ゆする)は何でもいいと思えた。 「閻魔様(えんまさま)…人間、食べるんですね…いいですよ、たべても。ここは、漆黒色と消炭色なんですね…」 伏し目がちにそう言う。 疲れ切っていた揺には、食べられようが関係なかった。 むしろ、誰かの役に立てるのならば喜んで食べられるくらいだった。 早く食べて、と言わんばかりに閻魔様らしき男を見つめた。 「…何を言っているのかは分からないが、止められそうにない。いただくとする」 閻魔様は、揺を寄せた。
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