119人が本棚に入れています
本棚に追加
どちら様で。
目を覚ますと、暗い部屋に居た。
漆黒色の部屋に、チラホラと見える黒ではない…消炭色の家具。
『地獄の色は、なんだろうな。やっぱ赤系だったりするのか?海老色とか朱殷色だったりするんだろうか。もし行けたら、描いてみよう』
『お前は相変わらず絵命だな。そんなやつの相手出来んのは俺くらいしかいねぇんじゃねぇの〜?ま、居ても離す気ねぇし譲らねぇけどなぁ』
…嫌なものを思い出した。
「起きてたのか。」
体も起こさず目だけを動かして周りを見ていると、頭上から声がした。
体を動かそうとしたが、咄嗟には動かせなかった。
仕方なく、視線だけを向けた。
「…そんな顔をするな。食べてしまいたくなるだろう」
つっこむことすら馬鹿らしく思えるほどに今の揺は何でもいいと思えた。
「閻魔様…人間、食べるんですね…いいですよ、たべても。ここは、漆黒色と消炭色なんですね…」
伏し目がちにそう言う。
疲れ切っていた揺には、食べられようが関係なかった。
むしろ、誰かの役に立てるのならば喜んで食べられるくらいだった。
早く食べて、と言わんばかりに閻魔様らしき男を見つめた。
「…何を言っているのかは分からないが、止められそうにない。いただくとする」
閻魔様は、揺を寄せた。
最初のコメントを投稿しよう!