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自己紹介。
「起きろ」
声が聞こえ、目を覚ます。
幸いにも、揺は目覚めのいいタイプだった。
だが、目の前の男…閻魔様を見て揺はとっさに起き上がろうとするが、ため息1つと共に押さえつけられる。
「佐伯綺月だ、俺の名前。閻魔様とか言う訳の分からない名前で呼ばないでくれ」
…どうやら夢を見ているようだ。
なんて思いながら、閻魔様もとい綺月と名乗った男をぼーっと見る。
邪魔にならない長さの檳榔子黒の色をした髪に、切れ長の目。筋肉に覆われた厚い胸に白とも胡粉色とも言える血色がいいとは言えない派だ。
そして、長くて大きいグロテスクな男のモノ。
「そんなに見るな。好きなやつに見られると恥ずかしいだろ。それよりお前の名前教えてくれ」
自覚はなかったが、無意識に男のモノをまじまじと見ていたらしい。
恥ずかしくなり、揺は顔を背けてフルネームで名乗った。
だが、揺の脳内では「色も形も大きさも違う…」とテンパっていた。
そんな脳内事情を知らない綺月は、揺に声をかけてきた。
「俺はお前が好きだ。一目惚れってやつだな。お前の儚く悲しそうな横顔に惹かれた。だが、お前は面白い。どんどん好きになっていく。そばに居てくれ。もう、死のうとはするな。」
揺は、戸惑い恐怖を覚えた。
こんなこと言って、いつかは俺を捨てるはずだ、と。
「返事は、「はい」か「うん」か「YES」しか聞かない。その分期限は無限だ。何年でも何十年でも待つ。それと、揺。ここは今日からお前の家でもある。ここに住んでもいい、好きに出入りしてくれ。だが、元の家に帰っても構わない。まだ売り払っていないし、俺は手をつけていない。お前の幸せを奪うことはしたくない、好きなようにするといい。1つ約束してくれれば、何も口出しするつもりは無い。お前は自身の幸せを第一に考えろ。そのためなら、俺を利用しても構わない。むしろ光栄なくらいだからな。それと、歯止めが聞かず大人気なく酷いことをした。すまない。」
揺の頭を撫でながら、真剣そうな表情で話す綺月。
綺月の真っ直ぐな瞳に捕まり、揺は目をそらすことが出来ず、静かに1度だけ頷いた。
その日は、体がだるく動くのが億劫だったため甘えて泊まらせてもらった。
揺の身の回りの事は全て綺月がしたため、綺月は忙しなく動いていた。
揺は申し訳なく思ったが、綺月はというと、「好きな奴が相手なら、世話をするのも幸せだと感じる。悪くないな」なんて思いながら、揺の知らないところで細く笑った。
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