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じゃあ、一旦。
「本当に大丈夫か?送っていくことも出来るが」
「大丈夫です。」
綺月の家の玄関で、揺と綺月は何度も同じ会話をしていた。
「一緒にいたい、そして一人にするのが心配だ」とらしくなく思っている綺月。
揺はというと、「早く1人になりたい」と強く思っていた。
「…綺月さん、俺ちゃんと帰れますから。」
綺月に愛想笑いをし、そう告げると抱きしめられる。
約二日綺月と共にした為、揺の頭は何も考えないようになっていた。
綺月の言動を気にしてはダメだ、と。
「…俺は、お前が心配だ。1人にしたくない。あわよくば、一緒にいたいんだ」
昨日は少し怖い感じの口調だったのに、なんて思いながら綺月の話を聞いていた。
「大丈夫です、ちゃんと綺月さんの元に帰ってきますから」
綺月の目を見て、ちゃんとそう伝える。
そもそも家に荷物を取りに行くだけじゃん、なんて思いながら、扉の前に仁王立ちしている綺月の隣を通ろうとした。
が、手を引っ張られて綺月の胸に寄せられた。
「その言葉を信じて待っている。い、いってらっしゃい」
扉の前で同じ会話を繰り返して30分弱、勝ったのは揺だった。
言い慣れていなさそうな言葉に擽ったさを覚えたが、いってきます、と答えて家を出た。
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