ら れべでれ

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『ガチャッ』 私の背がビクンと跳ねた。咄嗟にイーゼルに閉じたスケッチブックを置くとマットレスに着地した。入ってきたのはやはり覆面男だった。私は不覚にも自然と目を合わせてしまった。一瞬、覆面男の肩が上がったかと思ったがそれは幻覚のようで、覆面男は気にせずずかずかと入ってきた。視線をちょうちょ結びの解けたスケッチブックにやると、私を完全に見た。私は目を背けていたものの、それは熱線のように降り注いだ。 「見たな。」 それが覆面男の第一声だった。私はそのまま黙っていた。覆面男も黙っていた。蛍光灯のジーッという音がする。パラっパラっと音がしたかと思うと、覆面男は自らスケッチブックをめくっていた。1枚1枚吟味するかのようにじっと見つめて、ゆっくりとめくる。それはまるで私の体を舐められているような感触を走らせた。ペラぁとめくられる度、背中から首へ寒気が足音を立てて登ってゆく。早くページが終わればと、私はそう願った。
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