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「なぁーんだ、そんなことっ私に声をかければ良かったじゃない。」
私のふざけた声が響いた。
「別に私を連れ去らなくったって、こんな私で良かったらモデルになるよ。」
「ほっ本当かい。」
覆面男はそんな言葉がくるとは思ってなかったようで、また驚いたようだった。
「あっちゃんとお小遣いくらいは出してほしいかな。」
「ああ、そのくらいでいいなら出すとも。」
「あとご飯もつくと嬉しいかな。腹が減ってはモデルもできぬと言うしさ。」
「いいともいいとも。必要なものがあるならじゃんじゃん言いなさい。」
「そう?」
そして私は勝負にでた。
「じゃあさ、あとはまた明日ってことで…今日のところは帰っていいかな。」
すると覆面男がさっきまでの興奮はどこへやら、静まりかえった。私は自分の鼓動が聞こえまいかと、じっとこらえた。すると、
「良いぞ。」
覆面男は扉への進路を空けた。私は笑いを噛み殺しながら進んだ。ドアノブをひねるとあのひっかかりはなく、難なくカチャッと開いた。私は振り返ると、
「じゃあまた明日。」
と満面の笑みで嘘を言った。ゆっくりと扉を閉めると大急ぎで鍵を閉め、私は全速力で走った。
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