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終わりを告げたと思った声は、実は夢の始まりに向かう前ぶれ。
禁じられていたとしても、鮮やかに浮かぶ希望の輪郭。
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高校二年の夏休み最終日、あたしは入院している親友に、会いに行った。
でも親友が入院している病院には、少々厄介な障害が存在する。
まず、当局へ面会の申請をしなければならない。
一般的には、病院に面会の許可を取るのが普通だと思うけれど、親友が入院している所は極めて一般とはかけ離れているので仕方がない。
そして当局へ申請をしたところで、通常なら身元を洗いざらい調べられた上で、却下されてしまうらしい。
そもそも、“普通”の一般人が、こんな病院に用事があるとは考え難いけど。
が、あたしは、親友がここに入院する“きっかけ”なので、逆に身元は明らかだ。
二、三日で許可が下りるけれど、それでも到着時間は厳しく制限される。
そして高校生のあたしにとって、一番の障害は所在地だ。辿り着けないんじゃないかと思えるほど深い山間部にあり、また周囲に公共交通機関は存在しない。ただただ鬱蒼とした木々の間に続く一本道を、自家用車か又はタクシーで行くしかないのだ。
けれど、今のところ、当局が何とか車を回して送迎してくれている。
そこまでしても、世間的にこの病院の存在は隠匿しておきたいものであり、また外部との接触は遮断しておきたいと言う事なのだろう。
でも、あたしは、どうしても親友に会っておきたかった。夏休み最後の日だったから。
明日は始業式。またドブ川の底に溜まったヘドロが、何かのきっかけで巻き上がったような陰鬱とした感情の渦の中へ、身を晒すような日々が始まるから。
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『伽耶の感情が溢れてくる、楽しんでいるのが伝わってくる。それがあたしは羨ましい。罪を論うなんてことは意味がないほど、明確な輪郭をもった、鮮やかな衝動……』
『ハルカ、あなたはわたしに存在する意味をくれた。あなたを癒すために、あなただけの為にここに居るよ』
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