霧の城①

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「遠野…くん」 ーー光の先に、両手を鎖で繋がれた遠子がいた。 無機質な空間。小屋で拉致された忌々しい記憶が蘇るーー 「遠…子」 「遠子ちゃん!!」 すぐに駆け寄って鎖を外そうとする聖。遠子は何度泣いたのかわからないぐらいに涙が溢れていた。 「遠子!!もう大丈夫だからな…!!」 持っていた、中学の頃から使用している青地のハンカチで遠子の涙を拭う。 ボロボロのハンカチに相沢の目が光る。 物持ちが良すぎるねあんた、なんて吹き出しが見えるぐらいだ。この物語は小説だ。
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