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「君さ、今年中に調理師学校卒業できないんだろう?」
「そう…ですね。来年以降…ですね」
一年で卒業できるとは限らない調理師学校。専門士」の称号はニ年制でなければ取得することはできない。
神妙な面持ちの店長は俺の肩を掴む。
「いやぁーーケダモノーー‼」
「君は冬でもボケたがるね」
…とまあ俺のキャラをわかっている店長には感謝しかない。高校時代からの長い付き合いの中、融通を利かせてくれる温かい職場だ。
「遠野くん。君が中国に渡り料理人への道に進むことは承知しているが…
もし夢を諦めるつもりであればうちで正社員として働いてくれないか」
「……。」
正社員。まるで頭になかった。困惑する俺の肩を再度掴む。考えておいてくれ、にプレッシャーを感じてしまう。
すぐに答えを出せないのは“滑り止め”だと思われたくないからだ。
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