最後に笑うのはあたしのはず

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「あたしとしてはずっと長美と一緒にいたいんだけどな。いい歳して結婚しないって言うのもお父さんもお母さんも心配しちゃうし、結婚は仕方なくって感じかな?」 あたしとしてはお姉ちゃんと一緒にいるなんて真っ平御免だ。長美は樹璃から離れるために独立するつもりだったのだが、未だに娘離れの出来ない父親によって「良き旦那を見つけるまで家から出ることは許さん!」と厳命されているために就職が決まっても未だに実家暮らしを続けざるを得ないのであった。それは樹璃も同じである。 「そう? お父さんはずっとあたしらに家にいて欲しかったんじゃないかな? 雛人形だって3月の1日に出して、5月一杯まで出しっぱなしだったじゃない。あたしらが行き遅れてでも長く家にいて欲しかったんじゃないの?」 「ああ、そんなこともあったわね」 「長く飾っておくと嫁に行き遅れるって迷信だったってこと」 「そうね…… そんなことはいいのよ。あたしがお嫁さんに行って、長美一人になるのが心配なのよ。あたし達は二人で一つの姉妹で長美が大好きなんだからね?」 また始まった。樹璃は何かと「長美が大好きなんだからね?」と言って長美に世話をかけようとしてくる。長美に出来ないことは樹璃には出来てしまう。こうして助けられたことは一度や二度ではない。長美も幼少期は「お姉ちゃんは何でも出来て助けてくれる」と樹璃に好意を覚えていたのだが、先述のように周りの人間の樹璃贔屓が生み出した劣等感により、蛇蝎のように樹璃を嫌うようになってしまっていた。 これ以上話をしたくない。長美は風呂から逃げ出すのであった。
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