雨が、止むとき。

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「ねぇ、雨、今日一日降り続けるのかな」 「そうだろうな」  俺は由加里にぶっきらぼうに答える。そして、この言葉は肯定でなく俺の願望だと、心のどこか奥底で意識する。  このままずっとずっと雨だと良い。  なぜなら  このままずっとずっと君を独占できるから。  俺は怖い。  たとえ手を繋いで、腕を組んで、外に出ても、いつか君が俺の手をすり抜けて何処かに去ってしまいそうで。安心できない。    こうして肌を合わせていないと。  君が俺のそばにいるのだと、無理矢理にでも体感しないと。  君に無理矢理にでも体感させないと。  俺の熱を君に擦り込まないと。  君の熱を俺は吸い取らないと。  だけどいつか雨は止むものだ。  たとえ、絹糸のような細い無数の水の線が天から落ちてくる様子が、俺の窓越しの視界を覆っていても。
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