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 この日も、雨宮(あめみや)心春(こはる)は雨の中にいた。芯まで雨を染み込ませたセーラー服は、所々、肌にペタンと張り付いている。彼女は両手を広げ、大雨でも小雨でもない雨を胸に浴びながら、瞼を閉じ佇んでいた。まるで雨と、心を通わせているように──。 「雨の声って知ってる?」  僕は、初めて彼女の声を聞いた。少し低いが、雨の中でも良く通る綺麗な声だった。
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