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 朝から雨が降り始めた。昨晩の天気予報では、午前は曇り、午後から六十パーセントと予報していた。当てにならない。  僕は傘を持ち、玄関を出た。ドアの前で佇み空を見上げる。大雨でも小雨でもない雨量。ザーザーでもシトシトでもない雨音。雨雲よりもずっと手前の、何もない空間から、どこからともなく生み出される雨粒が、僕に向かって落ちてくる。次から次へと、尽きることなく生み出される。  雨は、雨雲に溜まった水分が(あふ)れ、(こぼ)れた水が(しずく)となり、地上へ落ちて来たものだ。それが雨だと知っている。でも実際に零れているところを見たことがない。下から見上げている限りでは、雨雲ではなく、頭上のどこか空中から湧き出ているように見える。本当は、どこから出てくる水なのだろうか。  それは、僕の人生にも似ている。どこからともなく湧きだしてくる不運。運の出所が分かれば逃さずに済むはずだ。でも、いつだって出所は分からない。何もないところから急に湧いてきて、結局逃してしまう。そんな人生を送ってきた。チャンスを掴むコツがあるなら、教えて欲しい。  薄いブルーの傘を広げた。空が半分晴れた、ように見える。だから僕は、この傘が好きだ。
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