1/2
前へ
/9ページ
次へ

「おはよう。石上(いしがみ)陽介(ようすけ)」  教室に入ると、先に登校していた藤野(ふじの)晴香(はるか)が僕に挨拶をした。 「あ、うん」  中学一年生になって二か月以上経つというのに、未だに馴染めていない僕は、まともに挨拶を返すこともできない。我ながら厭になる。 「どうしたの?」  藤野晴香が訊いてきた。何事かと思い、僕は顔を上げた。藤野晴香と目が合うと、すぐに逸らせてしまう。その仕草が余計に彼女を心配させた。 「何か変よ。石上くん」 「いつもと変わらない」  俯く僕を覗き込み、彼女はじっと見つめてくる。 「んー、やっぱり変よ。心ここに在らずって感じ」 「大丈夫」 「そう?」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加