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今日もまた雨だ。
梅雨だから仕方がない。僕の部屋は東の方角に面している。天気の良い日は窓から朝日が射し込むのだが、今はもう七時だというのに、この日の外は薄暗く景色が滲んでいた。
土砂降りだ。
庭の植木や垣根の輪郭が分からない。こんな日に傘も差さずに外へ出たら、瞬く間にずぶ濡れになる。
あの子は、どうしているだろうか。今日もあの公園で傘も差さずに雨を浴びているのだろうか。激しい雨を見つめながら、僕は徐に考えていた。
傘を届けてあげたほうが良いのではないか。ふとそんな考えが浮かんだ。反射的に玄関へ向かい、薄いブルーの傘と、もう一つ別の傘を手に取った。
公園まで歩いて行き、入り口で立ち止まる。中を見渡すと、フェンスの内側で等間隔に並ぶ植木が公園を囲い、ラッパのような効果となり、それが一つのスピーカーとなり、ザーという雨音を発していた。地面や遊具に跳ね返る飛沫が、すりガラス越しに見ているように、景色を白く滲ませている。それでも人がいるかいないかは判別できた。
今は、いない。
平日の朝でも、いる日といない日があった。この日はいなかった。
「流石に大雨の日はいないか」
三十分ほど、僕は公園の入り口で佇んでいたが、結局あの女の子は現れず、僕はしぶしぶ家に帰った。
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