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仄明るいキャンドルのような、あたたかみのある灯りが灯るカウンター席。
そこに彼と隣り合わせで腰を落ち着けた菖蒲は、彼の知り合いだという年配のオーナーを交えての談笑に耽っていた。
王子様然とした見かけとは違い、少々強引だった彼だが、毎週ガナッシュを買いに店に通ってくるだけあり、チョコレートのことにやたらと詳しかったのもある。
そのせいで、いつしか警戒心も緊張感も薄れ、無類のチョコ好きが高じてショコラティエールになった菖蒲は、もうすっかり彼と打ち解けてしまっていた。
けれどまさか、コンプレックスまで暴露してしまうなんて、ありえない。酔っていたからだとしか思えない。
その結果。気づいた時には、シティーホテルらしき部屋にいて。キングサイズのベッドの上で彼に組み敷かれているという。
キスどころか恋の経験さえない菖蒲にとっては、夢だとしか思えないような驚愕の展開でしかなかった。
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