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どこに行くにも、何をするにも僕は大雅と一緒だった。
朝は僕たちの通学路が合流する所から一緒で、休み時間も一緒、お昼も一緒、当然グループ活動も一緒。僕達は本当に何をするにも一緒だった。
入学当初からその目立つ容姿で人気者になった大雅のそばに、こんな普通の僕が居たらさぞ反感を買うだろう。そう思っていたけれど、最初に大雅が『舎弟』宣言したことと、本当に嫌がらせをする隙もないくらい常に大雅がそばに居てくれたおかげで、僕はなんの嫌がらせをされることなく過ごすことが出来た。だから僕の中学時代は平穏無事に過ごせたのだけど、でも思わずにはいられない。
なんで僕?
大雅は本当に非の打ち所のないすごい人なのだ。
顔が良くて頭が良くて、背も高くてスポーツも万能。当然第二性はアルファで、いつも爽やかに微笑み、スマートでやさしい。本当に絵に描いたような王子様なのだ。
みんなの憧れ。
そんな大雅は生徒だけには留まらず、先生や保護者までも魅了している。その証拠に中3の時にスカウトされて、大雅はスチールモデルをすることになったのだ。するとますます大雅の人気は上昇し、この小さな街で知らないものはいないくらいの存在にまでなった。なのにそこに金魚のふんよろしくついて回る普通の僕。
疑問には思う。なんで僕はここにいるんだろう?って。でも今までもそうだったように、それについて僕は深く考えなかった。いつもそうだったから。僕の人生はいつも、誰かが決めてたから。だからその誰かが大雅であっても、僕は気にしなかった。
朝から帰りまでずっと僕を離さない大雅。帰りは共働きで誰もいない僕の家に一緒に帰ってきて夜まで一緒に過ごしても、僕は大雅に何も言わなかった。第二性診断で僕の性がオメガであると分かっても、アルファの大雅と離れることは考えなかった。そばに居たらどうなるか分かっていても・・・。
だけど僕達は、僕がオメガであると分かる前から普通の友達以上の関係になっていた。
身体の成長が著しい大雅は心の成長も早かった。
見た目も中身もまだ小学生だった僕よりも、きっと何倍も大雅の性に対する興味は強かったのだろう。
大雅が僕の身体に触れたのは舎弟宣言のすぐ後だった。つまり、出会って直ぐに、僕達はそう言う関係になったのだ。
誰も知らない。
親も知らない。
あの舎弟宣言の日の帰り、大雅は僕の家に来たがった。それに対して僕はなんの疑いもなくそれに応じ、誰もいない家に大雅を上げた。
お互いまだ何も知らなかった。
僕は大雅のことを知らないし、大雅もきっと僕のことを知らない。だけど同じクラスの同級生。それも舎弟・・・なんて言われたけど、僕はそれを友達だと解釈していた。だから当然家に来たいと言われれば、快く応じたのだ。
普通ならそれでも、家に上がって出されたお茶を飲んで、しばらく話したりゲームしたりしながらその気になって、それでことに及んでしまった・・・となるだろう。
たけど大雅は違かった。
僕の家の玄関のドアが閉まったと同時に僕の部屋の場所を訊いた大雅は、靴を脱いだ途端に僕をその部屋に連れ込んでベッドに押し倒したのだ。
まだ中身も小学生の僕は、それがどんな意味を持つのか全く分かっていなかった。そんなことよりも、いつも微笑みを絶やさなかった大雅の顔からその笑みが消えて、まるで冷たさすら感じるような無表情になったことの方が怖かった。
後は・・・嵐のようだった。
噛み付くようにキスをされ、身体中を撫でられて、精通どころか、大きくなったこともなかったそこを大雅に握られた。そして初めて湧き起こる衝動に恐怖を覚えて泣き出す僕を、大雅は容赦なく犯した。
そしてその間囁かれ続けた言葉。
『お前はオレのものだ。この身体に触れていいのはオレだけ。オレだけがお前に触れ、オレだけがお前の中に入る』
まるで毒のように流し込まれるその言葉を、僕はほとんど手放したら意識の底で聞いていた。
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