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そんなわけで、ちょっと色々ごたついたものの最初の予定通りになった僕の進路をきみちゃんに報告すると、大きなため息をつかれてしまった。
「だと思った。番にならないだの、結婚しないだの、あんだけばりばりにパートナーにマーキングされててよく言うわと思ったけど、やっぱりだわ」
え?
「マーキング?」
僕に?
「されてる本人は分からないのよ。パートナーの香りなんて嗅ぎ慣れてるから。でもあゆくんのパートナーってものすごく独占欲強いよね。高校の時から思ってたけど」
「高校の時から?」
「そうよ。入学式で既にあゆくん浮いてたわよ。オメガしかいないクラスで、あんなにアルファの香りをさせてるなんて。パートナーどころか彼氏彼女すらまだいない人が多い中、あんなに濃ゆくマーキングされてるんだもの。だからみんなあゆくんに近づかなかったのよ」
知らなかった・・・。
高校ではあんまりそばにいなかったと思ったら、しっかりガードされてたんだ。
そういえば高校ではなかなか友達が出来なくて寂しかったとき、入学して直ぐに発情期休みに入ってたきみちゃんが復帰した朝、普通に僕に挨拶してくれたんだ。
「あの時思い切って声かけて良かった。こうして大親友になれたんだもん」
大親友・・・。
「僕もきみちゃんのこと大親友だって思ってる」
「うん。私たちはいつまでも仲良しだよ。だからあゆくんが幸せになってくれるのすごく嬉しい」
そう言ってぎゅっと抱きしめてくれた。
「おめでとう」
その言葉に涙が出てくる。
「ありがとう、きみちゃん」
「やだ、あゆくん泣かないでよ」
そういうきみちゃんの目も潤んでいる。
「きみちゃんも就職おめでとう。希望の会社に入れたんでしょ?頑張ってね」
「うん。もうすぐ研修があるんだ。でもその前に、あゆくんのパートナーに会わせてよ」
いきなりのその言葉に僕の涙は止まった。
「え?」
「ずっとあゆくんはすっごく愛されて幸せだと思ってたのに、めっちゃ不安にさせた挙句別れるなんて言わせたんだよ?結局元の鞘に収まったけど、またこんなことにならないように一度ガツンと言ってやりたいの。今後親友を泣かさないで。不幸にしたら許さないぞって」
そう言って鼻息荒く拳を握るきみちゃんにダメとは言えず、僕は大雅にメッセージで訊いてみた。すると意外にも了承する返事が。次の大雅のオフの時にうちで会うことになったんだけど・・・。
きみちゃん、大丈夫かな・・・。
ガツンと言えるのだろうか?
TAIGAの熱心なファンのきみちゃんが、うちで大雅に会ったらどうなるんだろう?
そんな心配をしながらもこうして何も変わらない、けれど今度こそ自分で選び取った日常は、これからも続いていく。
了
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