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 夏は、嫌いだ。  ムシムシするし、暑いし、何より頭が沸騰してしまう感じが嫌だ。  皐月の半ばくらいになると、いつも思う。 “ああ、今年も夏が来てしまう” 肌は焼けるし痛いし、暑いし、暑いし、とにかく暑い。 大好きな読書もはかどらない。  やりたいこと、たくさんあるもん。 まだ夏が来てしまったら困るよ。 あーあ、夏、なくならないかなぁ……。  朝起きて、ご飯食べて歯みがいて顔洗って、準備して学校に通う。 それだけのルーティーンに「暑い」が入る。大変鬱陶しい。 そう思いながらも、今日も学校へと向かった。  クラスには、もう夏服の人が数人いた。 夏を自覚させられる。 ほら、リュックのせいで制服もびっしょり、やんなっちゃう。 「あ、あやめ!おはよう」 「おはよう」 友達の、乃々果(ののか)が私の机によって来た。 乃々果は夏が好きで、明るくて、太陽みたいな子だ。 彼女もまた夏服の一人で、乃々果のことは嫌いじゃなくても嫌になってしまう。 はあ、とため息をつく。……最近ため息多いな。 「また、朝からため息ついちゃって、どうしたの」 「夏が、やなんだよ」  またそれ?と乃々果が呆れたけど、私にとっては深刻な問題なのだ。 「夏のいいところ言ってあげようか?   すこしはマシになるかもよ」 「お願いします」 乃々果いわく、 「まずは暑いでしょ!カラッとした暑さにはふぁーーってくるじゃん。 あとは夏の空気とか!?森とか行ったらまじでやばいよ!雨上がりとか、あんかアオハルっぽくていいじゃん!」  その他に、ラムネが美味しいだとか、セミの大合唱を聞けるとか、チャイムが鳴るまで語ってから彼女は席についた。 夏、ねぇ。 まずは暑いのは嫌でしょ!?カラッとした暑さにはのどが渇いでぐでーってなるじゃん。 夏の空気は重いし!?森とか虫がまじでやばいよ!雨上がりとか一番ムシムシするし、アオハルとか夏がなくなるならいらん!  はーあ、今日が梅雨で、あしたが夏で、明後日は秋がいいな。 ──6月28日、か。早いな。
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