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ふわりと白いワンピースを風に踊らせて立っている。当日。
行き先は朔遙が考えてくれた。
私は公園の横で朔遙を待っていた。
夏祭り、か……。
一昨年は家族と、去年は友達と。
今年は、……恋人と。
そう考えると胸の奥から何かがこみ上げてきてついにやけてしまう。
「うわ、那月早っ」
「朔遙が普通なんだよ」
そう言って現れた彼は、半袖の黒いYシャツ、トップスは白い無地の半袖、ボトムはジーンズの長ズボンとシンプルだが、彼にはよく似合ってる。
「じゃ、行こうか」
「言われなくてもね」
すでに辺りは人でごった返してた。
どこを見ても人、ひと、ヒト。
だいぶ過密である。
辺りはカラフルに彩られていて、花火が始まる前だというのに、使われていない色がないほど鮮やかだった。
「──赤は、時間を早く感じさせる色なんだって」
なんとなくポツリと言っただけだけど、
「そうか。じゃあ楽しまないとな」
というふうに返してくれた朔遙にきゅんとくる。
夏、なんだよな……。
朔遙の夏は、何が連れてきたんだろう。
私が連れて来られたらな。
でも、その人の夏は、誰も誰が連れて来るかわからない。
私、だったらいいのにな。
そう願ってみるだけである。
「那月?花火始まるぞ。移動しよう」
「……あ!うん、ごめん!いこ」
……なんてね。
何が連れてくるか、わかんないのに。
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