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ひゅーーーーー、ひゅるひゅる、ぴかっ、どーーーん
まんまるの花火が、私達を見下ろしながら開花する。
色とりどりのそれが、豪華に紺色の空を彩る。
「綺麗だね」
そんな普通の言葉が出た。
「そうだな」
“君のほうが”とかキザなこと言わないのは、ちょっとだけ安心する。
だって心臓が持たないじゃん?
ぴかっと、ひときわ大きな花火が輝いた。
花火を眺めながらも、やっぱり気になる。
──朔遙の夏は、何が連れてきたんだろ。
他の人かな?なにか大切なもの?
ううん、夏の空気?エアコン?日焼け止めの香り?
──こうして考えてみると、私って可能性はとても小さいんだよね。
花火を見てしみじみとしたからか、なぜだかそんな考えが浮かんで、しゅんとする。
折角朔遙が楽しませてくれようとしてるんだから、楽しまなきゃね。
そう考えてても、なかなかその考えは頭から離れてくれなかった。
最後の100連発花火をみおわると、夏祭りはもう終わり、という雰囲気がみんなの中で流れてきた。
終わり、か………。
鮮やかな赤色を恨めしそうに見つめた。
帰り道はもう暗かった。
お母さんに「帰ります」とLINEをして祭りの余韻を味わうように、ふたりでゆっくりあるいた。
「那月」
「……な、なに?」
「公園、よってこ」
「?──わかった」
朔遙は待ち合わせをした公園を指さした。
鞄から、“それ”を取り出した。
「線香花火……」
「そそ。最後はコレだろ」
ぱちぱち、と。
花が咲くように。
複雑な形を紡いで。
それはやがて落ちる。
線香花火を見ると、なぜだか儚い気持ちになる。
朔遙の目に、複雑な形が映り込む。
花火の中では、線香花火が一番好きかもしれない。
どっちが長く灯していられるか勝負したり、ただそれを見るだけだったり。相手と近づいても危なくないし。
──私の中で咲いた夏は、こうして、ぱちぱちと複雑な形を紡いで笑ってるのかもしれない。
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