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里見埋蔵金奇譚
一
明治三十八年五月、日露戦争の最中の話である。
南房総一帯で薬の行商をしている富樫銀造という男がいた。
まだまだ当時は医者や病院などは、ある程度の規模の町まで行かなければなかった時代である。
そんな僻地の村々に重宝されたのが薬の行商、今日で言う処の訪問販売である。
何せ自分から来てくれて、村人達が今まで見たこともないような西洋風の薬を出してくる。おまけにこれが頗る効き目が良いと来るから、噂は噂を呼び、
「うちの村にも来てくれ」
「うちにも是非」
と言った具合で、非常に繁盛した。
その月も銀造は鴨川方面に向かい、愛宕、嶺岡の両山麓の麓の村々を訪問して行商に励んでいた。
勝手知ったる場所、人であり、順調に薬を売り上げていた銀造は、ふと欲が出て、薬を売り終え、お茶をご馳走になっている家の主人に、
「御主人、この村の近くに何処か人の住んでる場所はありませんか。村の外でも構わないんですがね」
と聞いてみた。
主人は、「そうですなぁ一軒ですが、あることはありますが……」
と答える。
歯に物の挟まったような言い方をする主人を銀造は意にも介さず、
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