里見埋蔵金奇譚

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只の炭木だと思っていたものは、何と長さ五尺はあろうかという黄金で出来た延べ棒だったのだ。 「この家には同じものがあと三本あります」  驚きで言葉も出ない銀造を見て、 「埋蔵場所についてはいずれご案内しますが、お前様にも秘密を守る御覚悟を持って頂きたいのです。若し守って頂けない場合は」  加代はジッと銀造の目を見詰め、 「私はあなたを亡き者としなければなりません」  その目を見て銀造は、確信する。  ―この女は本気だ―  銀造は大変な秘密を知ってしまったことを覚った。 四  それから半年が経った。子供も日に日に大きくなり、加代もかいがいしく自分と子供の面倒を見てくれる。生活自体に不満はなかったが、銀造はそれでも全てを受け入れることが出来なかった。  埋蔵されている黄金を我が物にすれば、大金持ちになり御大尽の様な暮らしが出来るのに加代はそんなことをする気持ちは毛頭ないようだ。  主君との誓いとは言え、もう何百年も前の話だし、それに里見家自体がもう存在しないのだ。そんな約束を守ってどうする。  それよりもまだ存続している金窪家の為に使う方が遙かに有意義だし、滅んだ里見家の人達も喜んでくれるだろう。
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