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懸命に説いたが、
「例え時がどれだけ経とうと、主家が滅びても主命は主命。違うことは出来ませぬ」
と首を縦に振ろうとはしない。
―分からず屋め―
銀造は余りに時代錯誤な加代の考えに、次第に同調出来なくなってきていた。
それから一年経ち、銀造は遂に決意した。この家にある埋蔵場所を記した地図や記録類、そして黄金の延べ棒を持ち出して東京に行こうと。まだ加代からは埋蔵場所には連れて行ってもらってないが、話からおおよその場所は見当が付いていた。
加代に頼まれ村の商売屋に行く直前、銀造は加代が畑にいる隙を狙い屋根裏から桐の箱を取り出し、中の絵図面や記録を風呂敷包みに移した。箱を元通りに戻し、竈の中に手を入れる。中から次々に黒炭色の延べ棒を取り出した。同じく風呂敷き包みに入れ、何食わぬ顔で加代に出掛ける旨を告げ、歩き出した。
家が見えなくなると同時に走り出す。恐らく夕方位に加代は異変に気付く筈だ。出来るだけ早くこの場から去り、バスか汽車に乗って東京に向かわねばならない。村を通り過ぎ、ようやくバスの停留所に辿り着く。来たバスに飛び乗り、最寄の駅に向かう。
加代の幻影に怯えるが、その反面
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