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―大金を持って戻れば、もう子供もいるのだし、必ず心変わりしてくれる筈だ―
そう思いながら汽車に飛び乗り、東京に向かった。
行商時代に世話になり、親しくなった下村という男の家に銀造は転がり込んだ。
着物も体も汗と泥に塗れてやって来た銀造を見て下村は驚き、ともかく風呂に入れ着物を着替えさせた。
まだ東京では珍しかった麦酒(ビール)を出してやると、銀造は美味そうに飲み干す。人心地付いた銀造は加代に出会ってから今までのことを洗いざらい話した。
下村夫婦も余りにも突拍子もない話に最初は訝し気だったが、銀造が風呂敷包みから取り出した黄金の延べ棒を見るに及んで信用せざるを得なくなった。
「埋蔵場所の見当は付いています。下村さん取り出すのに協力してくれませんか」
と言われ、下村も協力を約し、その準備を進めていた三日目の或る日、銭湯から帰って来た下村の家内が、玄関の前に女が佇んでいるのを見掛けた。
「どちら様?」
と声を掛けたが、返事はない。
若しやと思い、
「銀造さん、女の人が!」と外から声を掛けた。
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