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「あるんですね。是非教えて下さい!」
頭を下げる銀造に対し、
「構いませんが、ここから二里以上離れてますよ。それにあの家はちょっと変わってるし」
出来れば紹介したくないような口振りであるが、それでも銀造は食い下がった。
「商売になるのでしたら構いません。お願いします」
根負けした主人は、紙にその家までの地図と自分が紹介した旨の書き付けを書いてくれた。
暗くなる前に着きたいと考えた銀造は、礼もそこそこにその家を辞し、地図を頼りにひたすら歩いた。
歩きながら銀造は、
―こんなに村から離れた一軒家に住んでいるなんて、確かに変わってるな。住んでるのは仙人なんかじゃないだろうな―
心配ではあるが、これも商売の為と割り切り、向かう。
やがて地図に書かれていた場所に着いた。確かに家が建っている。しかし掘っ立て小屋と言ってもいい位の襤褸屋(ぼろや)だ。
―こんな所に人がホントに住んでるのか―
不安を覚えたが、来たからには尋ねなければならない。
戸が壊れないように軽く叩き中に声を掛ける。
「私は薬の行商をしております富樫銀造と申します。薬のご紹介に上がりました」
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