里見埋蔵金奇譚

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 最初は何の反応もなかった。  留守かと思い、肩を落とした銀造だったが、暫くすると 「はい」  意外にも若い女の声がして、戸のつっかえ棒を外す音がした。  戸が開き中から顔を覗かせた女の姿を見て、思わず声が出た。 「えっ」 二  出てきた女は年の頃、二十四五位で清楚な着物を着ていた。  顔立ちも清楚な中にも、意志の強さを感じさせる目をしている。  はっきり言って美人である。 薬の商いをしている以上、東京や横浜にも行くことがある。そんな都会の女と比べても全く遜色がなかった。  我に返った銀造は、 「嶺岡村の和田定次郎さんから紹介されました。こちらがその紹介状です」  紹介状を差し出す。黙って読んでいた女はやがて顔を上げ、 「どうぞ」  戸を広げ銀造を招じ入れた。  家の中も外に負けず劣らずボロであった。恐らく女一人で直したりも出来ないのだろう。  先ずは自己紹介をし、持っている薬の効能について説明を始める。女は興味深そうに話を聞き、色々な質問をする。その受け答えだけで銀造は女の知性の高さを感じ取った。
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